Very Very WILD HEART

ひぐらしひなつ
大分県中津市生。1996年より作歌をはじめ2003年、第一歌集『きりんのうた。』を出版。


『きりんのうた。』
第一歌集。2003年BookPark刊。ご注文は歌葉まで。


隔月刊「CONKA」にコラム「ひぐらし硯・うたの裏事情」連載中

月刊「セーノ!」読者歌壇「短歌の花道」担当

大分市の心療内科医院デイケアにて短歌講座担当


大分トリニータ情報誌『Winning Goal』ナビスコカップ優勝記念特別記念号

Raffaello Sanzio・Hildegard of Bingen・鳥居みゆき・Leonardo da Vinci・Lavshuca・四谷シモン・島田雅彦・Tim Burton西島秀俊・Queen・BPN・football
 
「題詠blog2007」とは
歌人・五十嵐きよみさん主催のイベントで
参加者全員が1つのお題につき1首
合計100首の歌を1年間かけて詠んでいくという催しです

題詠blog2007参加作品

001:始     始発駅ホームに人を待ちながら銀の車両がひかりにとける

002:晴     晴れた日に人は死ぬから陽のようにさえずりばかり降る葡萄棚

003:屋根    犬の名はあなたの名前 屋根づたいに行けば月夜はかがやく素足

004:限     限りなく嘘に近くて限りなく海を求めた日もあったけど

005:しあわせ  しあわせと呼ぶべき日々のこの朝に真白き布をジャムで汚して

006:使     使い終えた割箸を折る癖のあるあなたの指を激しく憎む

007:スプーン  失ったものを数えてスプーンの背にあおぞらをうつす八月

008:種     またひとつ絶滅危惧種リストから消える名ありて濃き夏の木々

009:週末    閉園が通達されて週末の飼育係に降りしきる花

010:握     きみの肺がやさしく動きますように つめたき蛍ひとつ握って

011:すきま   埋めるほどのすきまもなくて夏草を押し倒しつつ空を見ていた

012:赤     昼下がりの読経ながれる路地裏を行けば揺らめき咲く赤い花

013:スポーツ  朽ちるように商店街は黄昏れてスポーツ用品店店じまい

014:温     萩の花揺れやまぬまま暮れなずむ体温ほどの憎悪もあれば

015:一緒    一緒だよって約束をした六月の湾の向こうに光るクレーン

016:吹     夕闇に決して紛れぬ山吹の色のコートがまだ遠くなる

017:玉ねぎ   玉ねぎが透き通るまで黙ってて 欺瞞をひとつふたつ数えて

018:酸     てのひらの暗き窪みを穿ちつつ酸性の雨けぶる春の日

019:男     やがてその男も死ねば新緑を濡らす雨より美しい日々

020:メトロ   増殖するメトロ 光は夜を抜け爆破予告のようにたばしる

021:競     梅雨晴れの言葉少なに競走馬引退セレモニーのあとさき

022:記号    薄い水胸にやさしく取り交わすすべてが記号となる冬の夜

023:誰     かつて多々まじわったはずの誰彼を思い出さずに行く春の街

024:バランス  どことなくアンバランスな午後にいて歯科助手の指先のつめたさ

025:化     病室はあかるく閉じて白くしろく化粧されつつかすかにわらう

026:地図    ゆるやかなきみへの傾斜 ポケットに地図はちいさく折りたたまれて

027:給     女給仕も馬丁もいない城なれど色めき立ちて薔薇園の薔薇

028:カーテン  カーテンのゆるきドレープ巻きつけて叔母は振り向く春のさなかを

029:国     この国のふるえるかたち やわらかなひかりのなかに彼らを悼む

030:いたずら  いたずらに描く肖像ゆがみつつあればこんなに遠いあなたが

031:雪     面会をゆるされた朝あたらしい雪を踏みつつそのまた先へ

032:ニュース  ニュースひとつ消費されつつ累々と積もるものたち白くかがやく

033:太陽    太陽の古い記憶を抱いたまま朽ちる家 もうあなたのことも

034:配     気圧配置冬に近づき取り交わす約束などもやさしさを増す

035:昭和    記念館の隅に再現されている昭和 もうこわれずにいようね

036:湯     喉をくだる葛根湯さよならをようやく言えて迎えた朝の

037:片思い   絶版の絵本なくせば遠き日の片思いにも似て遥かなり

038:穴     ボタン穴かがる指へとそそぐときすべてをゆるす冬の陽射しは

039:理想    諍いののちは家具屋で理想的展開として選ぶカーテン

040:ボタン   一通の手紙書き終え失ったくるみボタンを秋の日に恋う

041:障     萎えるほど気障な仕草で見送られながら潰える恋だとわかる

042:海     海としてきみの記憶に 間違えた歌も毛玉も、拒んだことも

043:ためいき  さっきから四分休符のかたちしてためいき燻らせてるばかりで

044:寺     菩提寺に降る雨ほそくあなたから名を教わった木々を濡らして

045:トマト   きっとこわいことが起こるとわかってたトマト畑にさそわれた朝

046:階段    階段のさきのあかるみ 死に近き朝の欅を鳥が飛びたつ

047:没     その眼窩いっそう暗く肉体を埋没させるとき花ひらく

048:毛糸    泣きながらほどく毛糸は誰のためでもない雨になりなさい春

049:約     それからの約半年は海を見て過ごした 拒む手紙も書かず

050:仮面    演じ終えて仮面ずらせば滑りだす舟 幾本の百合を束ねて

051:宙     還らない宇宙飛行士、野にそよぐ巨大たんぽぽ、わたしのこころ

052:あこがれ  白い皿を白いクロスに並べつつ五月の楡にあこがれていた

053:爪     雨の日は爪を磨いて置き忘れた鍵を恋うまだ見ぬ教会に

054:電車    いつもすこし泣きそうな顔見せている路面電車がすれちがうとき

055:労     写メのため翳すケータイ 労働者なだれて駅は西陽の終わり

056:タオル   丘の上の公園墓地へ行くでしょうタオルはためく九月の午後に

057:空気    致命的な嘘露呈してやわらかく空気清浄機のまわる音

058:鐘     鐘ケ淵あたりで待てば会えそうで橋が日暮れに沈むときまで

059:ひらがな  やまあいの郵便局でひらがなの名前まちがえられる十月

060:キス    七度目のキスで白ける恋がありクロスワードパズルにそそぐ秋の陽

061:論     論じあうのにも疲れてただ西へ西へ街道を肩を並べて

062:乾杯    乾杯とグラス打ちあうとききみのおもてをうすく流れるひかり

063:浜     夢でそこが浜だとわかる遠ざかる羽音やさしい重さに濡れて

064:ピアノ   手放したピアノ思えばしんしんと濃くなる夏の樹下のくらがり

065:大阪    新大阪通過してのち雨がきて無数の斜線描かれて闇

066:切     風切羽欠いたつばさではばたいて砂の足から崩れてゆくの

067:夕立    夕立に叩かれて立つ向日葵の明日咲くという約束のもと

068:杉     糸杉のひどくあかるい梢から燃えたつときに祖母をうしなう

069:卒業    唇はやがて閉ざされ卒業の儀式ののちの雲の切れ間を

070:神     神殿の重き扉に触れるとき銀のナイフに剥かれる果実

071:鉄     投げつけられたものを見ていた鉄分の不足している体さらして

072:リモコン  リモコンが壊れた夜は背を向けて眠る なにか倒れる音がする

073:像     肖像はひかりのようで なんとなく返しそびれた本の頁に

074:英語    それが英語だとわかるまで遊星へ攫われる 三月の号外

075:鳥     雨が鳥の喉を濡らして過ぎるとき。あなたのドアをノックするとき

076:まぶた   銃声ひとつ夜に流れて指先でまぶたにのせる銀色の粉

077:写真    舞い落ちる秋の栞はさよならと笑ったときの写真 聞こえる

078:経     猫舌を焼いた夜には緯度経度たしかめながら回す地球儀

079:塔     今日雨はやさしいけれど司令塔欠いて潰える春の布陣は

080:富士    虫の背をひからせている富士五湖の残りひとつを思い出せずに

081:露     花、川に散るままにして露天商同士諍う夕暮れを行く

082:サイレン  闇多き街に放てば鳥はあかくいま絢爛と響くサイレン

083:筒     封筒の端を裂くときそんな目をしないで秋は暮れてゆくのに

084:退屈    百合か犀か決めかねたまま退屈のかたちまどかに空を流れる

085:きざし   怖いのは傾くきざし スプーンを磨きつづけて朝が暮れても

086:石     石になる覚悟ならもうできていてあなたの髪に手をさしいれる

087:テープ   少しゆるく巻いたテープのそのゆるさが致命傷 俯く花になる

088:暗     ごめんもうもとに戻せない 暗闇で色とりどりのセロファン切れば

089:こころ   人あやむるこころに餓えてさまよえば野の百合は咲く凍えるままに

090:質問    さっきから投げかけられた質問を少し遠くで持て余しては

091:命     命乞う者の頭(こうべ)に雨は降り雨は降りつつ ふるえるあざみ

092:ホテル   逃げてきたホテルの部屋でしたためるメールに一羽鳩がまぎれる

093:祝     用意した鳩多すぎていっせいに空埋め尽くし晴れて祝祭

094:社会    社会派を標榜していたはずなのに何故なのかこの甘き珈琲

095:裏     裏返るちからもなくて風に背を押されつつ年の瀬の通りを

096:模様    空模様かたむくまでのひとときを、ましてあなたと見守りながら

097:話     ひとしきり話も尽きて見うしなう遥けさ 今日の雪の重さに

098:ベッド   からっぽのベッドのふちに腰かけてこれが最後に言う大丈夫

099:茶     守るようにその両の手は晩秋の薄い紅茶に沈む果実を

100:終     回廊のとぎれるところ美しい終わりが春の庭につながる

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